寝るだけで痩せる!?オーバーナイトダイエットとは!

激しい運動や厳しい食事制限が必要なく、ただちゃんと寝ることと週に1日食事をスムージーに置き換えるだけで痩せられるダイエット方法として今、話題なのが、「オーパーナイトダイエット」。1週間で4kg痩せるという噂は本当でしょうか。「オーバーナイトダイエット」の理論とメソッドを冷静に考察して、その真偽やダイエット生活に役立つヒントを探ってみましょう。

 

オーバーナイトダイエットとは~その実践方法

ボストン医療センターのキャロライン・アボヴィアン博士が提唱した新しいダイエット・メソッド。1週間のはじめの食事を自家製の高タンパクなスムージーにして、残りの6日間は高タンパク食を心がければ何を食べてもよく、運動はとくに必要なし。この食餌療法と合わせて毎日8時間たっぷりと眠ることで、1晩で約0.9Kgの減量ができ、最初の1週間で約4Kgの減量が期待できるというものです。

 

どうして痩せられるの? オーバーナイトダイエットの理論

 

筋肉量を落とさないから痩せる

 

通常のダイエットで食事を制限すると、体重が落ちるのと比例して筋肉量も減ってしまいます。でも筋肉は、基礎代謝を高めてカロリーを消費してくれる大切なもの。筋肉量が低下した体=太りやすい体質なのです。

しかし、オーバーナイトダイエットでは、週に1日、食事をスムージーに置き換えたときも、そのスムージーを高タンパクにして、通常の食事でもタンパク質を意識的にたくさんとることで筋肉量を落とさないようにしています。これにより、筋肉量を落とさずに摂取カロリーを減らして、代謝を維持したままで脂肪燃焼を促し痩せるという理論です。

 

体脂肪を増加させるインスリン値を減らす

 

食物に含まれる糖分を過剰に摂取すると、インスリンが過剰に分泌されます。インスリンは別名「肥満ホルモン」と呼ばれていて、インスリン値が高いと血圧も高くなりやすく、肥満や生活習慣病などの要因になるといわれています。インスリン値が高くなると、体脂肪が増えて太りやすくなるのです。

砂糖を使った甘いお菓子などだけでなく、体内でブドウ糖に変わる炭水化物(米、小麦などからできているパンやご飯、パスタなど)もインスリン値を上げてしまう食品の代表格。ただし同じ糖でも、果物などに含まれる果糖は、インスリン値を上げません。

そこで、果物や野菜をたっぷり使ったスムージーを、ブドウ糖が多く含まれている食事の代わりに摂ることで、インスリン値を高めない=体脂肪を増加させない=痩せ体質になれる、というのがオーバーナイトダイエットの考え方です。体脂肪がつきやすいお腹周りや下半身のダイエットに効果的、という説もあります。

またスムージーの整腸作用で便秘予防や便秘解消にも役立ちます。

 

8時間たっぷり寝ることで、食欲を抑え、成長ホルモンの分泌を促進させる

 

睡眠不足になると、食欲をつかさどる「レプチン」と「グレリン」という2つのホルモンの分泌が乱れてしまいます。レプチンは脂肪を貯える脂肪細胞が分泌するホルモンで、脂肪細胞内の脂肪量などに合わせて体内の代謝を上げたり食欲を抑制する命令を脳に送るホルモンのこと。

グレリンは胃から分泌されるホルモンで、脳の視床下部に食欲増進と血糖値上昇の命令を出しています。このふたつのホルモンの分泌が正常でなくなると、身体に栄養が十分に足りているのに、食欲が抑えられなくなってしまいます。

また、質の良い睡眠中に多く分泌されるという成長ホルモンは、別名「若返りホルモン」。体の代謝を促して、たくさんのカロリーを消費しやすい体を作ってくれる成長ホルモンの分泌が睡眠不足によって阻害されれば、代謝の悪い=太りやすい体質になってしまいます。

さらに夜遅くまで起きていれば、小腹がすいて夜食を食べたりスナックをつまんだり、人によってはお酒といっしょにおつまみを、という機会が増えます。夜更かしは、ホルモン的に見ても、生活習慣面から考えても、肥満の大きな要因というわけです。

夜更かしや睡眠不足の習慣を捨て、たっぷりと寝ることによって健康的で痩せやすい体質を作れるので、痩せられるというのがオーバーナイトダイエットの基盤となる考え方です。

 

オーバーナイトダイエットの理論を科学的に評価してみる

筋肉量を落とさないから痩せる?

 

筋肉を作るうえで、タンパク質は欠かせない栄養素です。どんなに運動しても、タンパク質を撮らないと、筋肉量は増えません。しかし、オーバーナイトダイエットでスムージーに加えるというプロテインパウダーなどの高タンパク食品を摂った「だけ」では、筋肉は作れません。プロテインは薬ではなく、あくまでも高タンパクな食品。肉や魚、乳製品や大豆製品などを食べてたんぱく質を摂ることとなんら変わりはないのです。

筋肉量を増やすには、筋肉に物理的な負荷をかける=筋肉トレーニングを行うことでしか、つきません。トレーニングを辞めれ(動かなけれ)ば、筋肉量は落ちます。つまり、運動をほとんどせずに「プロテインを摂って寝ている」だけで、筋肉量を維持できる(あわよくば増加させられる)とするのは、少々無理がありそうです。

ただし、糖分の摂取を控え、高タンパクの食品を積極的に摂ることは推奨すべき食生活です。「食べ過ぎ」が問題な現代人が、週に1度ローカロリーかつ高タンパクで、ビタミン・ミネラルも豊富なスムージーを食事代わりにとることで、ソフトなファスティング(断食)で摂取カロリーを調整するのは健康的にもよいことですし、ダイエット効果があるといえます。

 

体脂肪を増加させるインスリン値を減らす?

 

体内でブドウ糖に変わる炭水化物や砂糖などを控えることは、インスリン値を低く保つことに効果があります。丼物やパスタだけの食事をよく摂っていた人が、肉や魚、乳製品などをメインにして炭水化物の摂取量をおさえたり、甘い炭酸飲料や砂糖入りコーヒーなどを好んで飲んでいた人が、ミネラルウォーターや砂糖抜きコーヒーにすれば、インスリン値を低くキープすることができます。インスリンの影響による、体脂肪の増加は防げるといってよいでしょう。

ただし気を付けたいのが、ブドウ糖の代わりに多くとってしまいがちな「果糖」です。スムージーに入れてもよいとされる果物や甘みの強い野菜類には果糖が多く含まれていることがあります。

膵臓から分泌されるインスリンに影響を与えるブドウ糖とは違い、肝臓で代謝される果糖は血糖値やインスリン値には影響を与えませんが、果糖の多量摂取は中性脂肪の蓄積を招き、コレステロールの合成を促進するという研究結果もありますから、食べ過ぎはやはり肥満につながるのです。「フルーツはヘルシーでダイエットにもいいから、いくら食べても大丈夫」と安心するのは危険です。

 

8時間たっぷり寝ることで、食欲を抑え、成長ホルモンの分泌を促進させる?

食欲を刺激する2つのホルモンの分泌が睡眠不足によって乱れ、肥満の原因になることや、質のよい睡眠は成長ホルモンの分泌を促進することはオーバーナイトダイエット以前から、多くの研究によって証明されています。

そして、夜更かしが食べ過ぎにつながるのは、誰にも心当たりがあることでしょう。よく眠ることがダイエットに効果的であるというオーバーナイトダイエットの基本的な考え方に、間違いはありません。

 

海外発、医師発のダイエット法の落とし穴

 

オーバーナイトダイエットは、アメリカでも権威のあるボストン・メディカル・センターで栄養や体重管理のマネージャーを担当している医師、キャロライン・アボヴィアン博士が提唱しています。たくさんの実証例と医学的知識を持つ医師が提唱したダイエット法なら、さぞかし効果があるのではないかと期待しがちですが、ちょっと考えてみましょう。

まず、アボヴィアン博士は、栄養や体重管理を行わなければいけない肥満患者を対象に研究を行っている点に注目しましょう。ABCニュースでは、実例として「マサチューセッツ州の42歳女性・エイミー・フランケルは、オーバーナイトダイエットで79kgほどあった体重が56kgまでに減量できた」と伝えています。

肥満で病院に通う79kgの人が、オーバーナイトダイエットで56kgになったのは事実でしょうが、日本の平均的な体型の女性が「あと3kg痩せる」ために、同じ方法が非常に効果的かどうかは疑問です。外国の人、とくにアメリカ人の場合、日本人と比べて大柄であるとともに全体的な肥満度もとても高く、食生活も私たちとは違うのです。

健康的で美しく痩せようとするとき、1ヶ月に落としてもいい体重は、現在の体重の5%までと言われていますから、60kgの人の場合は3kgほど。本当に1週間で4kgも体重が減ったとしたら、それは少しリスクの高いダイエットとして見直しが必要です。

オーバーナイトダイエット自体は、そのメソッドを見る限りそれほど過激なものではありませんから、健康に影響を与える心配はほとんどないでしょうが、過剰に期待して劇的な効果を求める人は、少し冷静になるべきかもしれません。

 

十分な睡眠は、ダイエットに効果がある!

 

オーバーナイトダイエットに大きな期待を抱いていた人には、少しがっかりするレポートになってしまったかもしれません。しかし、このダイエット・メソッドには、ダイエット成功の大きな手がかりも隠されています。それは「睡眠の重要性」です。

オーバーナイトダイエットでは、睡眠中に分泌される2種類のホルモンに注目しましたが、質の良い十分な睡眠には、さらにダイエットに嬉しい効果があるのです。

 

時間栄養学でわかった「朝食」「十分な睡眠」の重要性

 

これまでの栄養学は1日に摂取するカロリーの総量のみを重視してきましたが、時間生理学の視点から栄養学を考える「時間栄養学」という考え方が、最近とても重要視されています。1日に「どれだけ」食べるかだけでなく、1日の「いつ」「どのように」食べるかに注意を払うことで、身体への影響に大きく差が出るというのです。

時間栄養学では「全く同じメニューを食べても朝よりも夜食べるほうが太りやすい」こと「朝食を食べないと、肥満しやすいこと」などがわかってきました。

寝る前に食べると、食べた食事が消費されず(寝ていて体を動かさないから)蓄積されやすいので、太りやすいというのは言われてみればごもっともな理論。「朝食を食べないと肥満をしやすい」理由はどうでしょうか。人間の体は、睡眠中は消費エネルギーをなるべく少なくする節約モードになりますが、朝目覚めて太陽の光を浴び、食事をすることによって、節約モードから消費エネルギーが高くなる活動モードに切り替わるのだそうです。

朝食を食べずに1日をスタートさせると、日中も節約モードが続いて1日の総エネルギー消費量が低下、つまり太りやすくなってしまうのです。朝食をおいしく食べ、活動モードに切り替えるには、たっぷり眠って「お腹が空いて」目が覚めるのが理想なのだとか。

ダイエットや健康・美容によい生活に「夜きちんと寝て、質のいい睡眠をたっぷりとる」ことがいかに重要なのかがわかれば、劇的な効果はないとしても「オーバーナイトダイエット」をやってみる価値が十分にあることが、おわかりいただけたのではないでしょうか。

 

オーバーナイトダイエットはこんな人におすすめ

 

ぜひオーバーナイトダイエットにトライして欲しいのは「運動や食事制限をしているのに、なかなか結果が出ない」という悩めるダイエッター女子です。現在の運動はそのまま続けて、夜8時間たっぷり寝ることを心がけ、朝・昼・晩の3食のうちでもっともボリュームを大きくした朝食をおいしく食べる規則正しい生活にシフトすれば、停滞していた体重にきっと変化が表れるはずです。

睡眠によって食欲ホルモンのバランスが整うので「食べたい」という欲求が抑えられるので、ローカロリーな食事のつらさが軽減。そして朝食で活動モードに入った体は動きやすく運動も楽しく行えます。食事は、炭水化物などの主食より、お肉や魚、乳製品などの良質な高タンパク食品と、スムージーなどでビタミン・ミネラル豊富な野菜をしっかりとりましょう。
オーバーナイトダイエットのセオリー通り、週に1日は食事をスムージーに置き換えればさらに効果が表れます。